往復書簡006:クレオール

ぼくを湿地帯に引きずり込んだなんて、とんでもない。どうか、お気づかいなく。なにしろ、ぼくは、「日本近代美術史」という、天使も踏むを危ぶむ泥濘地帯をフィールドとして研究をつづけてきたのですから。 そればかりではありません。「日本」と呼ばれるこ…

往復書簡005:背丈ほども伸びた草のなかで

SGT

北澤さん 珍しく、時間をおかずに返信します。 ブリコラージュ、コーヒーカップ、そして動いているということ。どれも心に沁みました。本来そんな気持ちの悪い場所に、じめじめとした湿地帯に、足を踏み入れる必要などなかった人を、引きずり込んでしまった…

往復書簡004:ブリコラージュ

ずいぶんと応答が遅れてしまいました。失礼をお詫びします。ひとこと言い訳をさせていただけば、博士課程の院生たちの論文指導が大きな山場を迎えところに豊田市美術館の講演と集中講義の準備が重なって、てんてこまいの毎日でした。どうか、ご寛恕ください…

往復書簡003:ギー・ドゥボール

SGT

北澤さん大変遅い返信になってしまいました。お許しください。遅れた言い訳をあれこれ書き綴るのも無粋なので、海(つまりそれは海岸って言うこと?)に行っていたからかなあとでもしておきましょうか。 さて、ぼくたちはいま芸術表象という新しい専攻のアイ…

往復書簡002:東京から

季節の移りゆきは、都会にいても感じられます。先日、相模大野の居酒屋で口にした生ビールの金属臭に夏の終わりを直感しました。蝉たちの「死の舞踏(ダンス・マカーブル)」も山場を越え、アスファルトのうえに無残な亡骸をさらしています。秋のおとずれは…

往復書簡001:越後妻有から

SGT

僕はいま、越後妻有に滞在しています。浦田地区という妻有のなかでも豪雪地帯に建つ空き家を改修して、展示とディスカッションなどを行う“critics coast (批評家の海岸)”というプロジェクトを行うためです。今年は、梅雨が長引いたこともあり、7月末からずっ…